はじめに (対象読者・この記事でわかること)

この記事は、Androidアプリ開発者、特にJavaを使用してアプリを開発している方を対象としています。Androidアプリ開発中に「繰り返し停止しています」というエラーに遭遇した経験がある方や、このエラーの原因と解決方法を知りたい方に向けています。

この記事を読むことで、Androidアプリで発生する「繰り返し停止しています」というエラー(ANR: Application Not Responding)の原因を理解し、具体的な解決方法を学ぶことができます。また、エラーを防ぐためのベストプラクティスも学ぶことができ、アプリのパフォーマンスを向上させるための知識を得ることができます。

前提知識

この記事を読み進める上で、以下の知識があるとスムーズです。

  • Javaの基本的な知識
  • Androidアプリ開発の基本的な知識
  • Android Studioの基本的な操作

Androidアプリの「繰り返し停止しています」エラーとは?

Androidアプリで「繰り返し停止しています」というエラーメッセージが表示されることは、多くの開発者にとって頭の痛い問題です。このエラーは、アプリが一定時間以上応答しない場合にシステムによって表示される「ANR(Application Not Responding)」エラーのことを指します。

ANRは、ユーザー体験を著しく損なうだけでなく、アプリの評価を低下させる原因となります。特に、スマートフォンの性能が向上する中で、ユーザーはスムーズなアプリ体験を期待しています。そのため、ANRの原因を理解し、適切に対処することはAndroidアプリ開発において非常に重要です。

ANRが発生する主な原因は、メインスレッド(UIスレッド)で時間のかかる処理を実行し続けることです。Androidシステムは、メインスレッドが一定時間(通常は5秒)以上応答しない場合にANRを発生させます。この時間は、操作によって異なり、バックグラウンドでのブロードキャストレシーバーは10秒です。

ANRの原因と具体的な解決策

ステップ1:ANRの原因を特定する方法

まず、ANRの原因を特定する必要があります。Android Studioには、ANRの原因を特定するためのツールがいくつか用意されています。

Android Profilerの使用

Android StudioのAndroid Profilerを使用すると、アプリのパフォーマンスを監視し、メインスレッドでの処理時間を把握できます。

  1. Android Studioでアプリを実行します。
  2. Android Profilerタブを開きます。
  3. CPUプロファイラを選択します。
  4. アプリでANRが発生する操作を実行します。
  5. プロファイラの結果を確認し、メインスレッドで時間のかかっている処理を特定します。

logcatの確認

logcatを使用して、ANRが発生した際のシステムログを確認することも有効です。

  1. Android Studioのlogcatビューを開きます。
  2. ANRが発生した際のログをフィルタリングします(タグ「ANR」でフィルタリング)。
  3. ANRの原因となったスレッドのスタックトレースを確認します。

ステップ2:メインスレッドでの重い処理の特定

ANRの原因を特定した後、次にメインスレッドで実行されている重い処理を特定します。一般的に、以下のような処理がメインスレッドで実行されるとANRの原因となります。

  • ネットワーク通信
  • データベース操作
  • 大量のデータ処理
  • 画像の読み込みと処理
  • 複雑な計算処理

これらの処理は、メインスレッドではなく、別のスレッド(ワーカースレッド)で実行する必要があります。

ステップ3:非同期処理への切り替え

メインスレッドでの重い処理を特定したら、次に非同期処理に切り替えます。Androidでは、以下の方法で非同期処理を実装できます。

AsyncTaskの使用

AsyncTaskは、バックグラウンドでの処理とUIスレッドとの連携を簡単に行うためのクラスです。ただし、Android 11以降では非推奨となっているため、新しいプロジェクトでは使用しないでください。

Java
private class DownloadFilesTask extends AsyncTask<String, Void, String> { protected String doInBackground(String... urls) { // バックグラウンドでの処理 return "result"; } protected void onPostExecute(String result) { // UIスレッドでの処理 } }

ThreadとHandlerの使用

ThreadとHandlerを使用することで、明示的にスレッドを管理できます。

Java
new Thread(new Runnable() { @Override public void run() { // バックグラウンドでの処理 Message msg = handler.obtainMessage(); handler.sendMessage(msg); } }).start(); Handler handler = new Handler(Looper.getMainLooper()) { @Override public void handleMessage(Message msg) { // UIスレッドでの処理 } };

ExecutorServiceの使用

ExecutorServiceは、スレッドプールを管理するためのインターフェースです。複数のタスクを並列実行する場合に便利です。

Java
ExecutorService executor = Executors.newSingleThreadExecutor(); executor.execute(new Runnable() { @Override public void run() { // バックグラウンドでの処理 runOnUiThread(new Runnable() { @Override public void run() { // UIスレッドでの処理 } }); } });

RxJavaの使用

RxJavaは、非同期処理を簡単に記述できるライブラリです。特に、複雑な非同期処理を扱う場合に便利です。

Java
Single.fromCallable(() -> { // バックグラウンドでの処理 return result; }) .subscribeOn(Schedulers.io()) .observeOn(AndroidSchedulers.mainThread()) .subscribe(result -> { // UIスレッドでの処理 }, throwable -> { // エラー処理 });

ステップ4:UI操作の最適化

非同期処理に切り替えた後は、UI操作の最適化も重要です。UI操作の最適化には、以下の方法があります。

レイアウトの最適化

複雑なレイアウトは、描画に時間がかかる原因となります。以下の方法でレイアウトを最適化できます。

  • レイアウト階層の深さを減らす
  • LinearLayoutの代わりにConstraintLayoutを使用する
  • includeタグやViewStubを使用して、不要なビューの読み込みを遅らせる

画像の最適化

画像の読み込みと表示は、UIのパフォーマンスに大きな影響を与えます。以下の方法で画像を最適化できます。

  • 適切なサイズの画像を使用する
  • WebP形式などの、軽量な画像形式を使用する
  • GlideやPicassoなどのライブラリを使用して、画像の読み込みとキャッシュを効率化する

リストビューの最適化

リストビュー(RecyclerViewなど)は、大量のデータを表示する場合にパフォーマンスが低下しやすいです。以下の方法でリストビューを最適化できます。

  • ViewHolderパターンを使用する
  • アイテムのレイアウトをシンプルにする
  • スクロール中の処理を最小限にする

ハマった点やエラー解決

非同期処理を実装する際には、いくつかの落とし穴があります。以下に、よくある問題とその解決方法を紹介します。

UIスレッドからの直接操作

非同期処理でバックグラウンドスレッドからUIを直接操作すると、例外が発生します。UI操作は、UIスレッドで実行する必要があります。

Java
// 誤った例 new Thread(() -> { textView.setText("Hello"); // 例外が発生する }).start(); // 正しい例 new Thread(() -> { runOnUiThread(() -> { textView.setText("Hello"); }); }).start();

メモリリーク

非同期処理でActivityやFragmentの参照を保持すると、メモリリークの原因となります。WeakReferenceを使用して参照を保持するか、ライフサイクルを考慮したライブラリ(ViewModelなど)を使用します。

Java
// 誤った例 private Activity activity; public MyTask(Activity activity) { this.activity = activity; // メモリリークの原因 } // 正しい例 private WeakReference<Activity> activityRef; public MyTask(Activity activity) { this.activityRef = new WeakReference<>(activity); } @Override protected void onPostExecute(String result) { Activity activity = activityRef.get(); if (activity != null && !activity.isFinishing()) { // UI操作 } }

並列実行の問題

複数の非同期処理を並列実行する場合、競合状態やデッドロックが発生する可能性があります。同期化処理や、適切なスレッドプールの設定が必要です。

Java
// 競合状態の例 private int counter = 0; public void incrementCounter() { new Thread(() -> { counter++; // 競合状態 }).start(); } // 同期化の例 private final Object lock = new Object(); private int counter = 0; public void incrementCounter() { new Thread(() -> { synchronized (lock) { counter++; } }).start(); }

解決策

以上のステップを実装することで、ANRの原因となっているメインスレッドでの重い処理を解消し、アプリのパフォーマンスを向上させることができます。具体的な解決策は以下の通りです。

  1. Android Profilerやlogcatを使用してANRの原因を特定する
  2. メインスレッドでの重い処理を特定する
  3. 非同期処理(AsyncTask、Thread、Handler、ExecutorService、RxJavaなど)を使用して、重い処理をバックグラウンドスレッドで実行する
  4. UI操作の最適化(レイアウト、画像、リストビューなど)を行う

これらの対策を実施することで、ANRを防ぎ、ユーザーに快適なアプリ体験を提供することができます。

まとめ

本記事では、Androidアプリで発生する「繰り返し停止しています」というエラー(ANR)の原因と解決方法について解説しました。

  • ANRは、メインスレッドでの重い処理が原因で発生する
  • Android Profilerやlogcatを使用してANRの原因を特定できる
  • 非同期処理に切り替えることで、メインスレッドの負荷を軽減できる
  • UI操作の最適化も、ANRを防ぐために重要である

この記事を通して、Androidアプリ開発者がANRの原因を理解し、具体的な解決策を実装できるようになったことと思います。これにより、ユーザーに快適なアプリ体験を提供し、アプリの評価を向上させることができるでしょう。

今後は、Androidアプリのパフォーマンスチューニングに関するさらなる情報や、最新のAndroid開発トレンドについても記事にする予定です。

参考資料