はじめに (対象読者・この記事でわかること)

この記事は、Arduinoを使った電子工作やプログラミングに興味があり、MacBook ProなどのMac OS Catalina環境でArduino IDEを使用しているものの、なぜか「シリアルポート」が表示されず、マイコンボードとの通信ができないという問題に直面している方を対象としています。

この記事を読むことで、Mac OS Catalina環境でArduino IDEからシリアルポートが見えなくなる一般的な原因を理解し、ご自身の環境に合わせて具体的な解決策を試すことができるようになります。これにより、Arduinoボードへのプログラム書き込みや、シリアルモニタでのデバッグ作業を再び行えるようになることを目指します。Arduinoを始めたばかりで、この「見えないポート」問題に戸惑っている方にとって、必ず役立つ情報を提供できると確信しています。

前提知識

この記事を読み進める上で、以下の知識があるとスムーズです。 * Arduino IDEの基本的な操作方法(ボードの選択、スケッチの書き込みなど) * Arduinoボード(Uno, Nanoなど)とPCをUSBケーブルで接続した経験 * MacOSの基本的なファイル操作(Finderでのファイル移動、削除など)

MacOS CatalinaでArduinoのシリアルポートが見えなくなる原因

Arduino IDEでスケッチを書き込もうとした際、「ツール」→「シリアルポート」のメニューに、普段なら表示されるはずのArduinoボードの名前(例:「/dev/cu.usbmodemXXXX」や「/dev/tty.usbmodemXXXX」)が表示されない、あるいは「ポートを選択できません」といったエラーが出てしまうことがあります。この現象は、特にmacOS Catalina (10.15) 以降のバージョンで報告されることが多く、複数の要因が考えられます。

最も一般的な原因としては、macOSのセキュリティ強化による影響や、Arduinoボードに搭載されているUSB-シリアル変換チップに対応したドライバが正しくインストールされていない、あるいはOSのアップデートによってドライバが非対応となってしまうことが挙げられます。特に、FTDI社製やCH340/CH341チップといった、Arduinoボードでよく使われるUSB-シリアル変換チップには、それぞれ専用のドライバが必要です。これらのドライバがOSに認識されていないと、Arduino IDEはハードウェアを検知できず、シリアルポートとして認識することができません。

また、USBケーブル自体に問題がある場合や、PCのUSBポートとの相性、あるいはArduino IDE自体の設定に一時的な不具合が生じている可能性もゼロではありません。しかし、多くの場合、ドライバの問題が解決の鍵となります。

解決策:シリアルポートを復旧させるためのステップバイステップガイド

ここでは、Mac OS Catalina環境でArduino IDEのシリアルポートが表示されない問題を解決するための具体的な手順を、詳細に解説していきます。一つずつ丁寧に進めていきましょう。

ステップ1:基本的な確認事項

まずは、最も簡単で、かつ意外と見落としがちな基本的な項目を確認します。

1. USBケーブルの確認

  • 別のUSBケーブルを試す: 特定のUSBケーブルが破損していたり、データ転送に対応していない(充電専用など)場合があります。信頼できるデータ転送対応のUSBケーブルに交換して、再度接続してみてください。
  • USBポートの確認: PC本体の別のUSBポートに接続してみてください。USBポート自体に物理的な問題がある、あるいはOSが特定のポートを認識しづらくなっている可能性があります。可能であれば、USBハブを介さずにPC本体のポートに直接接続するのが最も確実です。

2. Arduinoボードの確認

  • 電源ランプの点灯: ArduinoボードにUSBケーブルを接続した際に、電源ランプ(通常は"ON"や"L"と表記されているLED)が点灯するか確認してください。点灯しない場合は、ケーブルやボード自体の故障の可能性も考えられます。
  • 別のArduinoボードで試す: もし可能であれば、別のArduinoボードで試してみてください。これにより、問題が特定のボードにあるのか、PC環境にあるのかを切り分けることができます。

3. Arduino IDEの再起動と再インストール

  • Arduino IDEの再起動: 一時的なソフトウェアの不具合である可能性もあります。Arduino IDEを一度完全に終了し、再度起動してみてください。
  • Arduino IDEの再インストール: Arduino IDEのインストールファイルが破損している、あるいは古いバージョンを使用している場合、問題が発生することがあります。Arduino公式サイトから最新版のArduino IDEをダウンロードし、一度アンインストールしてから再インストールしてみてください。

ステップ2:macOSのシステムレポートでUSBデバイスを確認する

PCがArduinoボードを認識しているか、より詳細に確認するために、macOSのシステムレポート機能を使います。

  1. Appleメニューをクリックし、「このMacについて」を選択します。
  2. 開いたウィンドウで「システムレポート...」ボタンをクリックします。
  3. 左側のサイドバーで「ハードウェア」セクションの下にある「USB」を選択します。
  4. USBデバイスのツリーが表示されるので、ArduinoボードをPCに接続した状態で、リストの中にArduinoボードに関連するデバイス(例:「Arduino Uno」「FT232R」「CH340 serial device」など、チップ名やボード名が表示されることが多い)が表示されるか確認します。

もし、ここにArduinoボードが表示されているにも関わらず、Arduino IDEでシリアルポートが見えない場合は、ドライバの問題である可能性がより高まります。逆に、ここに全く表示されない場合は、USBケーブル、ポート、あるいはArduinoボード自体のハードウェア故障の可能性が考えられます。

ステップ3:USB-シリアル変換チップ用ドライバのインストール/再インストール

これが最も重要なステップであり、多くの場合、この問題の根本的な解決策となります。Arduinoボードには、PCと通信するためのUSB-シリアル変換チップが搭載されています。このチップに対応したドライバがmacOSにインストールされていないと、シリアルポートとして認識されません。

1. 使用しているArduinoボードのUSB-シリアル変換チップを確認する

まず、お使いのArduinoボードに搭載されているUSB-シリアル変換チップの種類を確認しましょう。 * Arduino Uno R3 / Arduino Nano (純正・互換品の一部): FTDI FT232RL チップ * Arduino Uno R3 互換品・一部のArduino Nano 互換品: CH340/CH341 チップ * Arduino Leonardo / Micro: Microchip ATmega32U4 (USB-CDC機能内蔵)

※互換ボードの場合、チップが異なることがあります。購入時の仕様を確認するか、ボードのチップ部分をよく観察して、チップに書かれている型番を調べると確実です。

2. 対応するドライバのダウンロードとインストール

FTDIドライバ (FT232RLチップ搭載ボード用)

FTDI社は、macOS用のドライバを公式に提供しています。 1. FTDI公式サイトのドライバダウンロードページにアクセスします。「VCP Drivers」(Virtual COM Port Drivers)を探します。 2. macOS用の最新版ドライバ(通常は「Mac OS X」または「macOS」という表記のインストーラー)をダウンロードします。 3. ダウンロードしたインストーラーを実行し、画面の指示に従ってインストールを進めます。インストール中に「システム環境設定」→「セキュリティとプライバシー」で、ドライバのインストールを許可するよう求められる場合があります。その場合は、画面の指示に従って許可してください。 4. インストール完了後、Macを再起動します。

CH340/CH341ドライバ (CH340/CH341チップ搭載ボード用)

CH340/CH341チップ用のドライバは、主にサードパーティから提供されています。 1. 「CH340 driver macOS Catalina」などのキーワードで検索し、信頼できる情報源(例えば、Arduino関連のフォーラムや技術ブログなど)からドライバをダウンロードします。 * 注意: 提供元が不明なサイトからのダウンロードは、セキュリティリスクを伴う可能性があります。できるだけ、信頼できる情報源から入手するようにしてください。 2. ドライバのインストーラーを実行し、画面の指示に従ってインストールを進めます。FTDIドライバと同様に、セキュリティ設定の許可が必要な場合があります。 3. インストール完了後、Macを再起動します。

3. インストール後の確認

ドライバのインストールとMacの再起動後、Arduino IDEを起動し、「ツール」→「シリアルポート」メニューを確認します。通常、この段階でArduinoボードが認識され、ポート名が表示されるはずです。

ステップ4:macOSのセキュリティ設定の確認 (SIPの無効化は非推奨)

macOS Catalina以降では、セキュリティ機能が強化されています。まれに、ドライバの動作がOSのセキュリティ機能によってブロックされている場合があります。 1. 「システム環境設定」→「セキュリティとプライバシー」を開きます。 2. 「プライバシー」タブを選択し、左側のリストから「フルディスクアクセス」または「ファイルとフォルダ」などを選択し、Arduino IDEや、インストールしたドライバ関連のアプリケーション(もしあれば)がアクセスを許可されているか確認します。 3. ただし、macOSのシステム整合性保護(SIP)を無効にするなどの、OSの根幹に関わる設定変更は、システム全体のセキュリティを著しく低下させるため、原則として推奨しません。まずはドライバの再インストールや、USBケーブル・ポートの確認を徹底することをお勧めします。

ステップ5:それでも解決しない場合

上記の手順をすべて試してもシリアルポートが表示されない場合は、以下の可能性も考えられます。

  • Arduino IDEのバグ: ごく稀ですが、Arduino IDE自体のバグである可能性も否定できません。IDEのバージョンを最新のものにしたり、古いバージョンを試してみたりすることも有効です。
  • macOSのOSアップデート: OSのメジャーアップデートによって、ドライバとの互換性が一時的に失われることがあります。OSのアップデート直後に問題が発生した場合は、ドライバの提供元からのアップデートを待つか、互換性のあるドライバを探す必要があるかもしれません。
  • ハードウェアの故障: Arduinoボード自体、あるいはPCのUSBコントローラーなどに物理的な故障がある可能性も考えられます。

まとめ

本記事では、Mac OS Catalina環境でArduino IDEからシリアルポートが認識されないという、多くのArduinoユーザーが直面しうる問題について、その原因と具体的な解決策を詳細に解説しました。

  • 基本的な確認(USBケーブル、ポート、IDEの再起動・再インストール)から始め、
  • システムレポートでのデバイス認識状況の確認、
  • そして最も重要なUSB-シリアル変換チップ用ドライバのインストール/再インストールという手順を踏むことで、この問題の多くは解決できることを説明しました。
  • 特に、Arduinoボードの種類に応じたFTDIドライバまたはCH340/CH341ドライバの正しいインストールが鍵となります。

この記事を通して、シリアルポートが見えないという問題に自信を持って対処できるようになり、Arduinoでの開発をスムーズに進められるようになることを願っています。もし、これらの手順でも解決しない場合は、使用しているArduinoボードの正確なモデル名や、OSのバージョンを添えて、Arduinoコミュニティのフォーラムなどで質問してみることをお勧めします。

参考資料