はじめに (対象読者・この記事でわかること)

この記事は、Arduino IDEを使用して、Windows 11搭載のパソコンからSONY Spresenseボードへスケッチを書き込もうとした際に、「Can not open port...」というエラーに遭遇した方々を対象としています。特に、COMポートが認識されない、あるいは認識されても書き込みができないといった問題でお困りの方を想定しています。

この記事を読むことで、Windows 11環境においてSpresenseへの書き込みができない原因を特定し、具体的な解決策を理解できるようになります。USBドライバーのインストール方法、COMポートの設定確認、Arduino IDEの設定見直しなど、段階を踏んで問題解決に進むための実践的な情報を提供します。これにより、スムーズにSpresenseでの開発を進められるようになることを目指します。

前提知識

この記事を読み進める上で、以下の知識があるとスムーズです。

  • Arduino IDEの基本的な操作: コードの入力、コンパイル、書き込みといった基本的な流れを理解していること。
  • Spresenseボードの接続: USBケーブルでSpresenseボードをPCに接続した経験があること。
  • Windows 11の基本的な操作: ファイルエクスプローラーでのファイル操作や、デバイスマネージャーの基本的な見方。

Windows11のArduino IDEからSpresenseへ書き込めない!「Can not open port」エラーの正体

Arduino IDEを使ってSpresenseにスケッチを書き込もうとした際、「Can not open port...」というエラーメッセージが表示され、先に進めないという状況は、多くの開発者が一度は経験するかもしれません。このエラーは、Arduino IDEがSpresenseボードと通信するための「COMポート」を正しく認識できていない、あるいはアクセスできない状態であることを示しています。

Spresenseのようなマイコンボードは、PCとUSBケーブルで接続されると、PC側では仮想的なシリアルポート(COMポート)として認識されます。Arduino IDEはこのCOMポートを通じて、開発したプログラム(スケッチ)をボードに転送したり、ボードからのデバッグ情報を取得したりします。そのため、このCOMポートが正常に機能しないと、書き込みはもちろん、シリアル通信を使ったデバッグも不可能になってしまうのです。

Windows 11という比較的新しいOS環境では、ハードウェアの認識やドライバーの取り扱いにおいて、過去のOSバージョンとは異なる挙動を示すことがあります。特に、Arduino IDEやSpresense SDK(Software Development Kit)に含まれるUSBドライバーが、Windows 11のセキュリティ機能やドライバー署名ポリシーと競合してしまい、COMポートの認識に問題が発生することが少なくありません。

このエラーが発生する原因は多岐にわたりますが、主なものとしては以下の点が考えられます。

  • USBドライバーの未インストール、または破損: SpresenseボードをPCに接続した際に、適切なUSBドライバーがインストールされていない、あるいはインストールが不完全である。
  • COMポートの競合: 他のUSBデバイスが使用しているCOMポートとSpresenseが使用しようとしているCOMポートが重複している。
  • Arduino IDEの設定ミス: Arduino IDEで選択しているボードやCOMポートの設定が、実際のSpresenseボードと一致していない。
  • USBケーブルやポートの問題: 物理的なUSBケーブルの断線や、PC側のUSBポートの故障。
  • Windows 11のドライバー署名 Enforcement: Windows 11では、未署名のドライバーのインストールが制限されており、これが原因でSpresense用のドライバーが正しく機能しない場合がある。

これらの原因を一つずつ潰していくことで、問題解決への糸口が見えてきます。次のセクションでは、これらの原因を踏まえ、具体的な解決策をステップバイステップで解説していきます。

「Can not open port」エラーを解消!Spresense書き込みトラブルシューティングガイド

「Can not open port」エラーは、主にSpresenseボードとPC間の通信経路、すなわちCOMポートの確立に問題があることを示しています。このセクションでは、Windows 11環境でこのエラーを解消するための具体的な手順を、網羅的に解説します。

1. デバイスマネージャーでのCOMポート確認とドライバーの確認・再インストール

まず、PCがSpresenseボードを正しく認識しているか、また、必要なドライバーがインストールされているかを確認します。

  1. Spresenseボードの接続: SpresenseボードをPCのUSBポートに接続します。
  2. デバイスマネージャーの起動: Windowsの検索バーに「デバイスマネージャー」と入力し、起動します。
  3. 「ポート (COMとLPT)」の展開: デバイスマネージャーのツリービューから「ポート (COMとLPT)」を探し、展開します。
  4. SpresenseのCOMポート確認: ここに「Arduino Spresense」や「USB Serial Device」といった名称でCOMポートが表示されているか確認します。COMポート番号(例: COM3, COM4など)が割り振られているはずです。
    • 表示されていない場合:
      • USBケーブルを一度抜き差ししてみてください。
      • 別のUSBポートを試してみてください。
      • 別のUSBケーブルを試してみてください。
      • それでも表示されない場合は、ドライバーの問題が濃厚です。
    • 「!」マークや「?」マークがついている場合: ドライバーが正しくインストールされていないか、問題が発生しています。
  5. ドライバーの再インストール:
    • Spresenseボードに対応したUSBドライバーを、SONYの公式ウェブサイトやSpresense SDKからダウンロードします。
    • デバイスマネージャーで、Spresenseに関連するCOMポート(または「不明なデバイス」として表示されているもの)を右クリックし、「デバイスのアンインストール」を選択します。
    • 「このデバイスのドライバーソフトウェアを削除します。」というチェックボックスが表示されたら、チェックを入れてアンインストールします。
    • PCを再起動します。
    • Spresenseボードを再度PCに接続し、ダウンロードしたドライバーをインストールします。インストーラーがある場合は、インストーラーに従って実行してください。手動でドライバーをインストールする場合は、デバイスマネージャーで該当デバイスを右クリックし、「ドライバーの更新」→「コンピューターを参照してドライバーを検索」から、ダウンロードしたドライバーのフォルダを指定します。

2. Windows 11におけるドライバー署名 Enforcement の無効化(一時的)

Windows 11では、セキュリティ強化のため、ドライバー署名 Enforcement(署名されていないドライバーの実行を禁止する機能)が有効になっています。Spresense用のドライバーがデジタル署名されていない場合、この機能が原因でドライバーが正常に機能しないことがあります。一時的にこの機能を無効化することで、問題が解決する可能性があります。

注意: この手順はセキュリティレベルを下げるため、完了後に再度有効に戻すことを強く推奨します。

  1. 高度なスタートアップオプションの起動:
    • 「設定」アプリを開きます。
    • 「システム」→「回復」を選択します。
    • 「PC の起動をカスタマイズする」の「今すぐ再起動」ボタンをクリックします。
  2. オプションの選択:
    • 再起動後、「オプションの選択」画面が表示されます。
    • 「トラブルシューティング」→「詳細オプション」→「スタートアップ設定」を選択します。
    • 「再起動」ボタンをクリックします。
  3. ドライバー署名 Enforcement の無効化:
    • 再起動後、「スタートアップ設定」画面が表示されます。
    • 「7) ドライバー署名強制を無効にする」のキー(通常はF7キー)を押します。
  4. Spresenseボードの再接続とドライバーインストール:
    • Windowsが通常モードで起動したら、SpresenseボードをPCに接続します。
    • デバイスマネージャーでCOMポートが正常に認識されるか確認し、必要であればドライバーを再インストールします。
  5. Arduino IDEでの書き込みテスト: Arduino IDEを起動し、Spresenseボードへの書き込みを試みます。
  6. ドライバー署名 Enforcement の再有効化: 問題が解決したら、PCを再起動して通常起動することで、ドライバー署名 Enforcement は自動的に再度有効になります。

3. Arduino IDEの設定確認

デバイスマネージャーでCOMポートが正しく認識されているにも関わらず書き込みができない場合、Arduino IDEの設定に問題がある可能性があります。

  1. Arduino IDEの起動: Arduino IDEを起動します。
  2. ボードの選択:
    • 「ツール」メニュー → 「ボード」 → 「Arduino Boards Manager」を開きます。
    • 「arduino-esp32」などのSpresense開発に必要なボードマネージャーがインストールされていることを確認し、Spresenseに関連するボード(例: 「SPRESENSE」や、使用しているSpresenseのバリアント)が選択されていることを確認します。
  3. COMポートの選択:
    • 「ツール」メニュー → 「シリアルポート」 → デバイスマネージャーで確認したSpresenseのCOMポート(例: COM3)が選択されていることを確認します。
    • もし、選択肢にCOMポートが表示されない、あるいは選択してもエラーになる場合は、前述のドライバーやデバイスマネージャーの設定を見直してください。
  4. 書き込みの実行: 設定を確認したら、再度スケッチの書き込みを試みます。

4. USBケーブルとUSBポートの確認

物理的な問題も、COMポート認識エラーの隠れた原因となることがあります。

  • USBケーブル: 別のUSBケーブル(データ通信可能なもの)で試してみてください。充電専用のケーブルではデータ通信ができません。
  • USBポート: PCの別のUSBポート(特に、マザーボード直結のポートなど、相性の良いとされるポート)で試してみてください。USBハブを使用している場合は、PC本体のポートに直接接続してみてください。

5. Spresense SDKのインストールとArduino IDEへの統合(高度な方法)

Spresense SDKには、Arduino IDEでSpresenseを開発するための統合環境が含まれています。SDKを正しくインストールし、Arduino IDEに統合することで、より安定した開発環境を構築できる場合があります。

  1. Spresense SDKのダウンロードとインストール: SONYの公式ウェブサイトから最新のSpresense SDKをダウンロードし、指示に従ってインストールします。
  2. Arduino IDEへのボードマネージャーURLの追加: Arduino IDEの「ファイル」→「環境設定」を開き、「追加のボードマネージャURL」にSpresense SDKのボードマネージャーURLを追加します。
  3. ボードマネージャーからのSpresenseボードのインストール: 「ツール」→「ボード」→「ボードマネージャ」から、インストールしたSpresenseボードを選択してインストールします。

この手順は、SDKのバージョンやArduino IDEのバージョンによって詳細が異なる場合があるため、公式ドキュメントを参照しながら進めることをお勧めします。

まとめ

本記事では、Windows 11のPCからArduino IDEでSpresenseにスケッチを書き込もうとした際に発生する「Can not open port」エラーについて、その原因と具体的な解決策を解説しました。

  • COMポートの認識とドライバー: エラーの根本原因は、PCがSpresenseボードを正しく認識できていない、あるいは通信に必要なUSBドライバーが正しく機能していないことにあります。
  • Windows 11固有の問題: OSのセキュリティ設定(ドライバー署名 Enforcement)が、ドライバーの正常な動作を妨げている可能性もあります。
  • 段階的なトラブルシューティング: デバイスマネージャーでの確認、ドライバーの再インストール、Arduino IDEの設定見直し、物理的な接続確認など、一つずつ問題点を潰していくことが重要です。

この記事を通して、「Can not open port」エラーに遭遇した際にも、自信を持って解決に取り組めるようになることを願っています。Spresenseを活用した多様なIoTプロジェクトや組み込み開発への一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。今後は、Spresenseのセンサー活用や、IoTプラットフォームとの連携といった、より実践的な内容についても記事にする予定です。

参考資料