はじめに (対象読者・この記事でわかること)

本記事は、Bash などのシェル環境で日常的にエイリアスを利用しているが、シェルスクリプトからは呼び出せないことに悩むエンジニアやサーバー管理者を対象としています。
この記事を読むと、エイリアスがスクリプト実行時に無効になる仕組みが理解でき、.bashrc の設定や source コマンド、shopt -s expand_aliases の使い方を踏まえて、スクリプト内でエイリアスを安全に実行できるようになります。また、実務で頻出するトラブルとその回避策も具体例と共に紹介します。

前提知識

この記事を読み進める上で、以下の知識があるとスムーズです。
- Bash あるいは Zsh などのシェルの基本操作
- Linux 系 OS のファイル構造と環境変数の扱い
- .bashrc.profile の役割と読み込まれるタイミング

エイリアスの概要とシェルスクリプトでの課題

シェルのエイリアスは、対話的に使用するコマンドの短縮形やオプション付きコマンドを定義する便利機能です。たとえば alias ll='ls -lah' と設定すれば、対話シェルで ll と入力するだけで ls -lah が実行されます。
しかし、シェルスクリプトは非対話的に実行されるため、デフォルトではエイリアス展開が無効化されています。これは、スクリプトが予期せぬ文字列置換を受けて動作が不安定になるリスクを減らすためです。その結果、スクリプト内で ll と書いても「コマンドが見つかりません」とエラーになるケースが頻発します。
この制約を回避するには、次の 2 つのアプローチがあります。

  1. エイリアスを明示的に読み込む
    source ~/.bashrc のように、エイリアス定義が書かれたファイルをスクリプト冒頭で読み込む。
  2. エイリアス展開オプションを有効化する
    shopt -s expand_aliases を実行して、シェルスクリプトでもエイリアス展開を許可する。

どちらの方法も一長一短があります。source はロードコストがかかりますが、エイリアスだけでなく他の環境設定も再利用できます。一方 shopt は軽量ですが、エイリアスが定義されたファイルを別途 source しなければ意味がありません。以降では、実務で最も汎用的に使える組み合わせ手順を具体的に示します。

シェルスクリプトからエイリアスを呼び出す具体的手順

ステップ1 エイリアス定義ファイルを整理する

まずは、エイリアスを一元管理できるファイルを作成します。多くのユーザーは ~/.bashrc にエイリアスを書き込んでいますが、スクリプト専用に ~/.bash_aliases を用意すると管理が楽です。

Bash
# ~/.bash_aliases alias ll='ls -lah --color=auto' alias gs='git status' alias py='python3'

このファイルは、対話シェルでも自動的に読み込まれるよう ~/.bashrc に以下を追記します。

Bash
if [ -f ~/.bash_aliases ]; then . ~/.bash_aliases fi

ステップ2 スクリプト冒頭でエイリアスを有効化する

次に、スクリプトの先頭でエイリアス展開オプションを有効にし、先ほど作成したエイリアスファイルを読み込みます。

Bash
#!/usr/bin/env bash # エイリアス展開を有効化 shopt -s expand_aliases # エイリアス定義を読み込む if [ -f "$HOME/.bash_aliases" ]; then source "$HOME/.bash_aliases" fi

この2 行だけで、スクリプト中で llgs が普通のコマンドと同様に使用可能になります。

ステップ3 エイリアスを実際に呼び出す

以下は、エイリアスを利用した簡単なスクリプト例です。

Bash
#!/usr/bin/env bash shopt -s expand_aliases source "$HOME/.bash_aliases" echo "カレントディレクトリの一覧を表示します" ll echo "Git リポジトリの状態を確認します" gs echo "Python スクリプトを実行します" py my_script.py

実行すると、対話シェルで手入力した場合と同様の出力が得られます。

ハマった点やエラー解決

1. 「command not found: ll」エラー

原因
shopt -s expand_aliases を書き忘れた、または source が失敗しているケースです。set -x でデバッグすると、source 行でエラーが出ていないか確認できます。

解決策
- スクリプト冒頭で必ず shopt -s expand_aliases を記述
- source "$HOME/.bash_aliases" のパスが正しいか echo $HOME で確認
- 権限が足りない場合は chmod +r ~/.bash_aliases を実行

2. エイリアスが対話シェルと挙動が異なる

原因
エイリアス定義に対話シェル専用のオプション(例: --color=auto)が入っていると、非対話環境では色が出ないだけでなく、端末が期待した形式で出力されないことがあります。

解決策
- --color=auto--color=always に変更するか、スクリプト用に別のエイリアスを作成
- 必要に応じて TERM 環境変数を設定:export TERM=xterm-256color

3. source が .bashrc の他の設定を上書きしてしまう

原因
source ~/.bashrc には、PATH の上書きやシェルオプションの変更が含まれることがあります。スクリプト実行時にこれらが予期せぬ影響を与えることがあります。

解決策
- エイリアスだけを抜き出したファイル(例: ~/.bash_aliases)を source する
- 必要最小限の設定だけをインポートするために、bash -c 'source ... && ll' のように限定的に実行

完全なサンプルスクリプト

Bash
#!/usr/bin/env bash # ------------------------------------------------- # ファイル名 : run_aliases.sh # 説明 : スクリプトからエイリアスを安全に呼び出す例 # ------------------------------------------------- # エイリアス展開を有効にする shopt -s expand_aliases # エイリアス定義だけをロード ALIAS_FILE="$HOME/.bash_aliases" if [[ -f "$ALIAS_FILE" ]]; then source "$ALIAS_FILE" else echo "エイリアスファイルが見つかりません: $ALIAS_FILE" >&2 exit 1 fi # 任意のエイリアスを使用 echo "=== ディレクトリ一覧 ===" ll echo "=== Git 状態 ===" gs echo "=== Python 実行 ===" py - <<'PY' import sys print("Python version:", sys.version) PY

このスクリプトは、どの環境でも同じ結果が期待できるように設計されています。エイリアスがロードできなかった場合は明示的にエラーメッセージを出力し、終了コード 1 を返すので CI パイプラインでも安全に組み込めます。

まとめ

本記事では、シェルスクリプトからエイリアスを呼び出すための基本的な設定手順と実装例を紹介しました。
- shopt -s expand_aliases でエイリアス展開を有効化
- エイリアスだけを切り出したファイルを source で読み込み
- 実装時に起こりがちなエラーとその具体的な対処法を提示

これにより、対話シェルで培った便利なコマンドショートカットをスクリプトの自動化にも活かすことができます。今後は、複数ユーザー環境でのエイリアス共有や、Docker コンテナ内でのエイリアス設定といった応用テーマも取り上げる予定です。

参考資料