はじめに (対象読者・この記事でわかること)

この記事は、サーバー運用や開発環境でログファイルをリアルタイムに確認したいシステム管理者・DevOpsエンジニア、あるいはプログラムのデバッグ作業を行う開発者を対象としています。稼働中のログファイルは他プロセスが同時に書き込みを行っている可能性があり、単純に catcp するとデータ欠損やロック競合が起きることがあります。本記事を読むことで、
- 書き込み中でも安全にログを閲覧・コピーできる仕組み
- OS が提供するロック情報やファイルシステムの特性を利用したベストプラクティス
- 実際に使えるシェルコマンド例とトラブルシューティング手順
が理解でき、運用中のサービスに影響を与えずにログを取得できるようになります。

前提知識

この記事を読み進める上で、以下の知識があるとスムーズです。
- Linux の基本的なシェル操作(bash)
- ファイルディスクリプタやロック機構の概念(flockfcntl 等)
- systemdlogrotate などのログ管理ツールの概要

ログファイルへの同時アクセスのリスクと OS が提供する仕組み

稼働中のログファイルは、アプリケーションやデーモンが継続的に write() システムコールで追記している状態です。このとき、ファイルは オープン状態 であり、以下のようなリスクが考えられます。

  1. データ欠損
    コピー処理が始まった瞬間に書き込みが行われると、コピー元のデータが途中で変更され、結果としてコピー先に不整合が生じます。特にバイナリ形式のログやトランザクションログでは致命的です。

  2. ロック競合
    アプリケーションが排他ロック (fcntl(F_WRLCK)) を取得している場合、他プロセスからの open は成功しますが、read がブロックされたりエラーになる可能性があります。

  3. ファイルシステムのキャッシュと遅延書き込み
    modern Linux のページキャッシュは書き込みを遅延させるため、コピー時にキャッシュ上のデータとディスク上のデータが一致しないことがあります。

Linux カーネルはこれらの問題に対処するために、以下の情報提供手段を備えています。

  • /proc/$$/fd//proc//fd/ で開かれているファイルディスクリプタを確認できる。
  • lsof コマンドでプロセスごとのファイルロック状態を一覧化できる。
  • inotify API がファイル変更イベントをリアルタイムで通知できる。

これらを組み合わせることで、「現在書き込みが行われているか」 を判定し、安全に閲覧・コピーする戦略を立てられます。

実践:安全に稼働中ログを閲覧・コピーする方法

以下では、実務でよく使われる手順と具体的なコマンド例を示します。環境は Ubuntu / CentOS 系の Linux、ログはテキスト形式(例: /var/log/myapp.log)を想定しています。

ステップ 1:書き込み中のプロセスを特定する

まず、対象ログを現在書き込み中のプロセスがいるかどうかを確認します。

Bash
# lsof で対象ファイルを開いているプロセスを一覧表示 lsof /var/log/myapp.log # 出力例 # COMMAND PID USER FD TYPE DEVICE SIZE/OFF NODE NAME # myapp 1245 root 4w REG 8,1 10240 12345 /var/log/myapp.log

FDw(write)または u(read/write)になっていれば、書き込み中です。

書き込みロックの有無を確認

Bash
# fuser -v でロック情報を取得 fuser -v /var/log/myapp.log

ロックがかかっていない場合でも、書き込みは継続している可能性があるため、次のステップでコピー時のスナップショットを取得します。

ステップ 2:コピー時にデータの整合性を保つ手法

2‑1. cp --reflink=auto(BTRFS/ZFS の場合)

Btrfs や ZFS は コピーオンライト(COW) を利用でき、コピーは元ファイルのスナップショットとして瞬時に作成できます。

Bash
cp --reflink=auto /var/log/myapp.log /tmp/myapp.log.snapshot

この方法は書き込みが続いても、コピー開始時点の内容が保証されます。

2‑2. rsync --inplace--append-verify

テキストログであれば、増分コピーを利用しつつ整合性チェックを行うことが有効です。

Bash
rsync --inplace --append-verify /var/log/myapp.log /tmp/myapp.log.copy

--append-verify は新規データだけを追記し、途中で書き込みが入っても整合性を検証します。

2‑3. ddconv=noerror,sync の組み合わせ

低レベルでブロック単位のコピーを行う場合は、エラーを無視しながら全領域を確実にコピーできます。

Bash
dd if=/var/log/myapp.log of=/tmp/myapp.log.dd bs=1M conv=noerror,sync

conv=noerror,sync により、読み取りエラーがあってもゼロ埋めでスキップせずにコピーが完了します。

ステップ 3:リアルタイムでログを追跡したい場合

tail -f は最も手軽ですが、書き込み中のファイルがローテートされた際に 「古いファイルを追い続ける」 という問題があります。inotifywait と組み合わせると、ローテートを検知して自動的に新しいファイルへ切り替えることが可能です。

Bash
#!/usr/bin/env bash LOG=/var/log/myapp.log while true; do tail -n0 -F "$LOG" & TAIL_PID=$! inotifywait -e move_self,delete_self "$LOG" >/dev/null 2>&1 kill $TAIL_PID sleep 0.5 # ログローテートが終わるまで待機 done

このスクリプトは move_self / delete_self イベントを監視し、ローテートが起きた瞬間に tail -F を再起動します。

ステップ 4:logrotate と連携した安全コピー

多くのディストリビューションでは logrotate が標準で導入されています。logrotatepostrotate フックを利用すれば、ローテート直後に安全なコピーや圧縮処理を自動化できます。

Conf
/var/log/myapp.log { weekly rotate 4 compress delaycompress missingok notifempty create 0640 root adm postrotate /usr/local/bin/safe_copy_myapp_log.sh endscript }

safe_copy_myapp_log.sh では、上記ステップ 2‑2 の rsync --append-verify を実行すれば、ローテートと同時に最新のログスナップショットが取得できます。

ハマった点やエラー解決

現象 原因 解決策
cp 実行時に「permission denied」 コピー先ディレクトリの権限不足 sudo または対象ディレクトリの権限を chmod 755 に変更
rsync --append-verify が途中で止まる 元ファイルがロックされている lsof でロックプロセスを特定し、flock -n で一時的にロック解除 (可能であれば)
tail -F がローテート後も古いファイルを追い続ける tail が inode の変化を検知できない inotifywait を併用したスクリプトに置き換える

解決策まとめ

  • ロック状況の事前確認lsof / fuser で書き込みプロセスを把握。
  • コピー方式の選択:COW が利用できる FS なら cp --reflink、汎用環境は rsync --append-verify が安全。
  • ローテート対応logrotatepostrotate フックや inotifywait による自動再接続で、ログロスを防止。

まとめ

本記事では、稼働中のログファイルを 安全に参照・コピー するためのポイントと実践的手順を解説しました。
- 書き込み中かどうかは lsof / fuser で判定でき、ロック情報はトラブル回避に必須です。
- コピー時は COWcp --reflink)や rsync の --append-verify を用い、データ整合性を保証します。
- ログローテートの検知は inotifywait と組み合わせたスクリプトで自動化でき、logrotate のフック活用で運用負荷を低減します。

これらの手法を取り入れることで、サービスを停止させることなくリアルタイムにログを取得でき、障害調査やパフォーマンス監視が格段にスムーズになります。今後は、分散環境(Kubernetes)での集中ロギングや、ELK/EFK スタックと連携したさらなる自動化についても取り上げる予定です。

参考資料